理学療法士 (PT) だって 人間だもん

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よりたくさんの方と意見交換できたら幸いです☆

2014年12月

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内側広筋と外側広筋による膝関節屈曲制限

前回は膝関節屈曲制限因子の一番有名な 「膝蓋上囊の癒着」 について書きました。

 ⇒膝蓋上囊の癒着による膝関節屈曲制限


本日はシンプルに大腿四頭筋、特に 「内側広筋」 と 「外側広筋」 について。

これらの筋が筋緊張亢進していたり、癒着していたりすると当然膝関節屈曲制限を引き起こす。

よって筋を十分に収縮・弛緩させる必要がある。


大腿四頭筋

「内側広筋」 は 「内側広筋」  「内側広筋斜走線維」 に分類して考えます。

なぜなら 内側広筋斜走線維 の起始は広筋内転筋膜を介し、大内転筋腱にあるからです

また停止部は、内側にある支帯や膝蓋大腿靭帯へと移行し、側方の安定性に関与します。


内側広筋の解剖学的ポイントとして、

①部位による線維角の違い

②内側広筋斜走線維の起始が大内転筋腱にあること、

③内側広筋斜走線維の深層に滑液包が存在すること、

が挙げられている。


特に運動療法では①の角度に着目する必要がある。

内側広筋線維角

この線維角の違いにより運動の方向を決定する。

大概は内側広筋斜走線維の弱化が目立つため target muscle になりやすい。

内側広筋・外側広筋 収縮


「外側広筋」 は内側広筋と同様に考えると分かりやすい。

① 「外側広筋」 と 「外側広筋斜走線維」 に分類できる。 線維角は浅め。

② 外側広筋斜走線維は腸脛靭帯の内面より起始する。

③ 膝蓋骨外側の支帯や靭帯へと移行し、膝蓋骨の側方安定性に関与している。


外側広筋の治療のポイントとしては、

股関節外転位をとることで膝関節屈曲可動域に差が出ないか?

である。

股関節外転位にすることで腸脛靭帯の緊張は低下するためである。

この有無により、膝関節拘縮に腸脛靭帯が関与しているか否かを判断することができる。

これらのことに着目しながら、しっかりと収縮させることが治療の第1選択となる。


次に大事なのが、「短軸方向への移動」 です。

以前も筋が滑走するイメージというところで少し書きました。

⇒ 筋や腱が滑走するというイメージはありますか?


大腿四頭筋を見るときにどうしても表面から見ることが多いです。

しかしながら横断面を見て横の広がりについて考えることが重要です。

大腿四頭筋断面図
横断面の滑走

外傷や手術侵襲により表層部分だけでなく深部の組織も損傷し治癒過程にあります。

その際、表面だけでなくもちろん皮膚より深部の組織でも癒着が起ころうとしています。

膝関節の屈伸を考える際に長軸方向の動きには着目しますが、

どうしても短軸方向への動きは忘れがちです!

大腿四頭筋が大腿骨の周りを横に広がっていくイメージを持ちましょう!

そして膝関節を曲げていって横に広がるかどうか触ってみましょう!

VL exensibility

この評価はそのまま治療につながります。

曲げては横に、曲げては横にとしていると膝が曲がってくる場合があります。

ぜひ長軸方向だけでなく短軸方向にも着目してアプローチしてみて下さい!

膝蓋上囊の癒着による膝関節屈曲制限

膝関節屈曲制限で一番有名な 「膝蓋上囊の癒着」 について。

一旦、癒着を起こすと引きはがすのに難渋するので予防が大事。

まずは膝蓋上囊(包)の解剖から。

膝蓋上囊

大腿骨と膝蓋骨をつなぐ滑液包。

膝関節の屈伸に伴いキャタピラのように動くことで、

スムーズに膝蓋骨が長軸方向に動くことが出来る。

 ( 膝関節伸展位では折れ曲がり二重膜構造になっているが、

   屈曲に伴い単膜構造にその形態を変える。 )

この場所に長期間水腫等が存在すると癒着を引き起こし、膝蓋骨の運動性を重度に障害する。

膝蓋上囊の癒着


この癒着の部位だが、

「膝蓋上囊の前後が癒着」 する場合と

「膝蓋上囊と大腿骨の間に存在する脂肪体: prefemoral fat pad が癒着」 する場合の

二種類が考えられる。

prefemoral fat padの癒着


よって 「膝蓋上囊あるいは prefemoral fat pad の癒着」 を予防することが大事だが、

そのためには基礎中の基礎 Quad setting をしっかり指導することが重要である。

Quad setting はどこの教科書にでも載っているが、

必ず大腿直筋を抑制して、より中間広筋(特に膝関節筋) を意識することが重要!



「膝関節筋」 
とは、中間広筋が遠位深層から分岐した筋線維により構成されている。

膝関節筋
膝関節筋②← 拡大・縮小率はあいまい



大腿直筋を抑制する方法としては、

下前腸骨棘辺りで患者さんに直接大腿直筋腱を触知してもらいながら、

「ここに力入れないで膝を伸ばしてね。」 と Quad setting を促している。

股関節の屈曲動作を入れないことが重要。

長坐位でハムストリングスの十分な伸張性がなく、

後方に倒れるのを防ぐために骨盤前傾筋として大腿直筋を使ってしまっている場合は

仰臥位等、ポジションを考える必要がある。


また、大腿直筋を抑制するために筋腱移行部に対する限局的なストレッチも紹介されている。

大腿直筋の抑制

Quad settingにより中間広筋(膝関節筋)を収縮させることで癒着を防止することが

治療の第1選択となる。

他には、中間広筋 および prefemoral fat pad をセラピストが直接両手掌で把持し、

上に持ち上げる 「lift off操作」 も臨床上用いられることがある。

大腿前面部を 「 Ω 」 こんな形に持ち上げる。

持ち上げたときに膝関節が少し伸展するのを確認すること。


一旦拘縮を作ってしまうと改善に困るので、

問題が起こってから対応するのではなく、

予防的観点から理学療法を展開できるようになりたいものです。

今日も一日、一日一善。

膝関節屈曲制限因子となり得るものたち

膝関節で一番の重要な機能 「完全伸展」 について書いてきました。

⇒ 関節可動域制限の基礎中の基礎 -膝関節を例に-


今度は 「膝関節の屈曲」 について考えたいと思います。

日本人は和式生活がまだまだ残っていますので、

正座や床にしゃがんだり、場所によっては和式トイレを使用する必要があります。

それでは膝関節は何度曲がれば正常なのでしょうか?

結論としては、その人が生活で必要な角度だけ曲がれば正常だと思います。

いつも学生さんを引き出して申し訳ないのですが、

生活に困っていない膝関節140度屈曲可能な高齢の患者さんで

問題点 #膝関節屈曲制限 ⇒ P1.膝関節のROMex

とするのは、少しずれている気がします。


生活に必要な角度は、

 正常歩行 60度  階段のぼり 80度 くだり 100度

 自転車 120度  ランニング 135度  正座 150度

等。

必ず問題点を上げる際には、何に困っているかを確認してください。


では、膝関節屈曲制限因子となり得るものは何があるのでしょうか?

前回も書きましたが、「膝関節」 は 「大腿骨」 「脛骨」 「膝蓋骨」 の3つで成り立っています。

「腓骨」 は関与していません!

膝関節

膝の周りって筋肉を除いてもいろいろありますね。 全部覚えるのが大変。。。

まずは大枠を捉えにいきましょう。


膝関節伸展制限の時も書きましたが、屈曲も同じです。

治療アプローチの順序としては、

1.過剰な骨棘等で曲がらない膝なのかどうか整形外科医師と相談する。

2.浮腫・腫脹をできるだけ取り除く。

その後、

3.軟部組織によるものや関節の機能破綻によるもの

を検討していく。

例に出すと、TKA後の急性期は浮腫管理の方が非常に重要です。


そして、軟部組織によるものを考えていくのが理学療法の醍醐味です。


 1)皮膚 ・・・ 手術後では切開創の癒着が問題となることが多々あります。

 2)筋 ・・・ 大腿四頭筋を代表にいろいろ考えられます。

 3)靭帯 ・・・ MCLを代表にACLやPCL、あとは内・外側膝蓋支帯も影響します。

 4)関節包 ・・・ 膝蓋上囊の癒着は有名です。

 5)脂肪体 ・・・ 伸展の時にも問題になりましたが、屈曲でもやはり。

            膝蓋下脂肪体だけでなく膝蓋上囊の下にある脂肪体(prefemoral fat pad)が有名。


以上のようなものが考えられます。

理学療法士はただ膝を曲げるのではなく、

膝関節屈曲制限因子に関して臨床的推論を立て、

それに対して適切な治療を選択し、

結果がどう変わったかを日々吟味することが大事だと思います。


最後にどんな患者さんでも通ずることを。

 ● 最初にも書きましたが、目標とする可動域を必ず設定する。

 ● 必ず active の運動を積極的にやる! しっかり収縮、しっかり弛緩!!

 ● 重力を味につける! 垂らせば曲がる。

 ● 屈伸に伴う patella の動きの左右差を確認する。

 ● 曲げ伸ばしの切り替え、そして回数が重要。 とにかく頻回に。

 ● 筋の代償動作を必ず見破る。

これらのことが臨床上、大事だな~と思うことです。

私もまだまだ未熟ですが、日々研鑽を積み重ねたいと思います。

「仕事」と「作業」の違い

私は常々、病院におけるリハビリテーション室は異様だと思うようにしている。

理学療法士は国家資格取得後、就職とともに患者から「先生」と呼ばれることがある。

実習や国家資格を終えただけでは何にもできないのに・・・。

そんな社会人として未熟で、理学療法士としても未熟な20歳代が、職場の大半を占めている。

そんな部署や企業は他にはない。

そしてそれをまとめるスタッフもこれまで組織や経営を意識することはなかった。

目の前にある膨大な患者さんにどうやって対応するかでいっぱいだった。

むしろ患者さんと治療するのが楽しく夢中だった。


しかし今の時代、理学療法士が大量に溢れ、「部署の管理」 という問題が出てきた。

これは上司が悪いとか、部下が悪いとかでは決してないことを強調しておく。

病院のリハビリテーション室として発展していくために乗り越えなければならない「壁」である。

「壁」 は成長するための良き試練である。

小人数が和気藹々として仕事に当たる時代はもう終わりにしなければならない。

仕事が終わってみんなで飲みに行けば和気藹々で構わないが、

仕事中は個人ではなく、組織として対応しなければ

いずれは患者から、また病院の他部署から見放されてしまうだろう。


人と人とが交わり集まる 「組織」 として今日は 「仕事」  「作業」 の違いを考えたい。


先輩に 「これ、コピーしといて」 と言われたら皆さんはどう思うか?

生意気な30歳代の私なら 「 はい 」 と答えて作業するが、内心は負のエネルギーが芽生えていると思う。

これは コピーするということを 「作業」 として捉えたからだと思う。

「仕事」 と捉えられればおそらく負のエネルギーは沸かないと思われる。


じゃあその差はいったい何なのか?

それは、

 仕事・・・自分の理想に向かって何かに価値をつけること。自己実現。

 作業・・・決まったゴールに向かって決まった手順を行うこと。

と私は思う。

「仕事」 にはたくさんの 「作業」 が含まれるが、

あくまでも仕事の範疇なら負のエネルギーが沸くことはない。

ただ単に作業の連続となった時、ヒトは負のエネルギーが沸き

「こんなのやってられっかー!」となってしまう。

どこかで踏ん切りをつけないと継続できないし、終えても充実感は得られない。


先ほどの例で言えば、コピーをただ単にコピーして上司に渡したら 「作業」

これを仕事にするためには・・・

 先輩はこういうものを読んでいるんだな、ふむふむ、と思い

 中身を少し拝読して自分なりの意見を少し付け加えてコピーしたものを渡す。

 「これってこういうことですか?私ならこう考えるのですが先輩はどう考えていらっしゃるんですか?」と。

そうするとコピーという 「作業」 は 「仕事」 の一部になり得ると思われる。


ここで大事なのが、受け手側だけでなく 渡す側の真摯さ である。

上司が何も考えず作業だけをやっとけという感じで渡すと部下は絶対に負のエネルギーを蓄える。

上司としては、

 仕事が人を育てる。立場が人を育てる。

 仕事をお願いすることで、部下が成長することを期待しなければならない。

 また作業を依頼する場合は、少しでも仕事として捉えてもらえるよう努力し、

 受けて側の現在の作業量を把握して、過剰に時間を奪うことだけは避けるべきである。


自分は今、30歳前半で部下として、また先輩として振る舞う場面がある。

まずは自分にできること、

 上司から言われたことはどんな理不尽なことでも 「仕事」 に置き換える

 後輩に頼むときは 「作業」 ではなく 「仕事」 として 「やらせる」 のではなく 「お願い」 する


ひとつひとつは小さな差だが、こういったことに配慮するかしないかで

組織力は変わってくるのではないだろうか?

若輩者が大それたことを言って恐縮だが、

思ったことを表現すること、理想を現実にするため努力すること、

どんな状況にあっても 「今できること」 だけを考え、それを実行していきたい。

膝関節伸展制限に対する「膝窩筋」「半膜様筋」

前回はちょっと変わったストレッチ 「メディカルストレッチ」 を紹介しました。

⇒ メディカルストレッチ?マジックストレッチ?

⇒ 丹羽滋郎 氏を紹介したもの。

昨日から試していますが、即時効果は確かにありそうです。

即時効果があるということは反復すればいいんですね。

ぜひご自身試してみて下さいね。


本日は、また機能解剖の観点から

膝関節伸展制限に対する 「膝窩筋」 「半膜様筋」 について。


まずは解剖から確認。

膝窩筋は膝関節後面にある単関節筋です。

大腿骨外側顆から脛骨後面上部に走行。
膝窩筋


半膜様筋は、坐骨結節から①大腿骨内側顆、②脛骨内側顆(膝窩筋筋膜に移行する)に走行。

半膜様筋


「膝窩筋」 「半膜様筋」 は半月板のすぐ後方を走行するインナーマッスルです。

しかも膝窩筋の右図で示したように半膜様筋から膝窩筋へ筋膜を通じて連絡しています。

これらが収縮することで後方関節包の挟み込みを防いだり、

また内側・外側半月板の後方移動を促したりします。

この図が分かりやすいと思います ⇒ 半月板と膝窩筋・半膜様筋の位置関係


解剖的位置を理解したらその作用を確認。

膝窩筋・・・屈曲に伴う下腿内旋作用。

       膝関節完全伸展位から膝関節の固定介助unlockingとして有名です。

半膜様筋・・・膝関節屈曲 + 下腿内旋作用。

        半腱様筋より深層に位置し関節の安定化、初動での滑らかさを出す。


ともに膝関節屈曲作用を持っていますので、膝関節伸展制限因子に十分なり得ます!


治療としては、

①膝窩筋の反復収縮練習(自動介助運動)

 文面で書くと仰臥位にて股関節および膝関節を屈曲伸展介助運動を行うだけ。

 その際にscrew home movementをしっかり考慮する!
 
 つまり屈曲に伴う下腿骨の内旋運動を誘導し、

 膝関節曲げるに伴い膝窩筋の起始:大腿骨外側顆へ近づけていく感じ。


②半膜様筋の反復収縮練習

 ヒールスライド等で低負荷の初期屈曲を練習する。

 半膜様筋の起始・停止の関係(膝関節90度屈曲位で直線的になる)から

 膝関節90度屈曲位で膝関節のrollingではなくslideを促通することもある。

 図12のポジションで脛骨後面近位に少し抵抗をかけ、それに対してまっすぐ引く感じ。

 もちろん腹臥位で行ってもOKです。

半膜様筋エクササイズ

文面で書くと簡単に感じますが、しっかりと解剖学的位置をイメージして練習する必要があります。

私もできているかまだまだ自信がありません。

ただ効果は間違いなくありますよ。

筋をしっかり触知しながら収縮弛緩できているか確認してみて下さい。
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