理学療法士 (PT) だって 人間だもん

脊椎圧迫骨折のリハビリエビデンスや理学療法の臨床で思う治療のワンポイント、理学療法士として身に着けておくべきメンタル等、理学療法士としての思いを形に。 

「PTだって人間だもん」のブログへようこそ!

職場という閉鎖された空間だけでなく、

よりたくさんの方と意見交換できたら幸いです☆

2014年11月

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理学療法士による脊椎圧迫骨折に対する基本動作指導

前回は脊椎圧迫骨折に対する固定法の比較をしている文献を紹介しました。

胸腰椎移行部の脊椎圧迫骨折にはやはり体幹ギプス固定が必要だと思っております。

脊椎圧迫骨折の骨折部位はかなり動く! それに対して体幹ギプス固定?コルセット?

本日は体幹ギプス固定の特徴と基本動作について書きたいと思います。


〇 体幹ギプス固定の強みと弱み しっかりと禁忌事項を伝えよう!

 体幹ギプス固定は確かに強固な外固定です。

 しかしながら骨折部への負担全てを軽減できるわけではありません。

 以下に私が臨床上、思う点を記載させて頂きます。


体幹ギプス固定により・・・


 ①(○) 体幹の 『 前後屈 』 ならびに 『 側屈 』 に対しては十分制限できる。

  ⇒ 体幹ギプス固定による最大の効果ですね。楔状変形を防いでくれます。

 
 ②(×) 一方、体幹の 『 回旋 』 は十分には制限できない!

  ⇒ ギプスは楕円形となるため部分的には制限されますが、
    
    体軸を中心に回転してしまうので十分には制限できません。 
    
    そのため 『 丸太用寝返り動作 』 が必要となります。

 
 ③(×) 縦にかかる重力(垂直応力)には、軽減効果は期待できない。

  ⇒ 腹圧上昇効果により若干の軽減はあるという人もいますが懐疑的。

    基本的に仮骨が十分できて安定するまでは、『 重量物運搬は禁忌 』 です。


 ④(○) 患者さんが勝手に外せない。

  ⇒ 硬性コルセットもかなり強固に固定してくれると思いますが、

    体幹ギプス固定の大きなメリット(デメリット?)がこの点です。

    外固定はどれもつらいもの・・・

    患者さんの立場からすれば疼痛が軽減してきたら緩めたくなるものです。

    よく困るのが夜間排泄時の装着不備です。

    また認知症患者によっては硬性コルセットが装着困難な場合があります。

    しかし骨折部の圧潰進行防止には日中夜問わず、強固な外固定が必要と思われます。

    ・・・ちょっと話がずれますが、経過の中で体重減少のため体幹ギプスに少しゆとりができ、

    体幹ギプスをチューブトップの服みたいに着脱していたつわものの患者さんを経験したことがありますw


 ⑤(◬) 入浴準備・動作に工夫がいる。

  ⇒ ギプスは基本的に水で濡らすことは禁忌です。

    そのため浴槽での入浴は固定期間中できず、原則シャワー浴となります。

    シャワー浴の方法は、

    1) まず体幹ギプス上に水がかからないゴミ袋やディスポエプロンで覆います。

    2) 首の周りにバスタオルを巻きます。

    3) その上に散髪用ケープを巻いて完成。


 ⑥(◬) 患者さんに治療を受け入れてもらうためにかなりの労力が必要。

  ⇒ これがなかなか難しい。

    疼痛のため入院してきて体幹ギプス固定を行うと信じられないくらい疼痛が軽減する。

    すぐに離床でき動けるようになると、患者さんはこれをはずしてくれ~と言う。

    気持ちは分かりますが…外すとまた痛くなりますよ・・・

    とにかく説明です。

    まだ骨は治ってないこと、痛みが出ること、猫背で姿勢が悪くなること、毎日説明します。

    あと体幹ギプス固定されている期間は退院できないと勘違いされてしまう。

    「こんなんつけて帰ってもなんもできんわ~」

    よくありませんか? (同感できる人の苦労をお察しします!!)

    逆に骨折してて何するつもりなんや?と思いますが・・・

    (聞くと多いのが草むしりや農作業です・・・お年寄りってほんとに草むしりが我慢できない・・・)

    これもとにかく説明と成功体験(特にお風呂)!

    あと禁忌事項の説明しかありません。


 ⑦(×) 緊急の場合に心臓マッサージが出来ない。

  ⇒ これは治療方法を選択する医師の問題ですが、セラピストも知っておく必要があります。

    緊急時どのように対応するかは施設で話し合っておいた方がいいです。


以上パッと思い当たる点を記載させて頂きました。


〇 脊椎圧迫骨折に対する基本動作指導 『丸太様寝返り』 『股関節促通』 『洗体・洗髪動作』

 ① 寝返り指導

  学生さんとか新人はROMや筋力評価をしたがりますが、

  そんなもんは入院前の生活を聞けばだいたい分かります。

  (ただし神経麻痺の存在等で筋力評価が必要な場合もあります)

  入院初日にPTがまず行わないといけないのが 『 丸太様寝返り動作の指導 』 です。

  これはいかなる固定方法であっても一緒です。

  寝返り時はどうしても、上半身先行 あるいは 下半身先行の寝返りになりやすいです。

  受傷前から丸太様寝返りなんかしている人はいないと思いますから。

  そこで、

  1) まずは体を捻じることで痛みが出ることを説明します。

  2) その後、両膝を立てた状態で深呼吸+肛門閉めの練習をします(local muscleの賦活化)

  3) 次にセラピストが肩甲帯および骨盤を介助して丸太様寝返りの経験をしていきます。

  4) 動作のイメージが湧いてきたら 呼気に合わせて 寝返りを行います。 

  ※ 必要に応じてベッド柵を使用しても構いませんが、上半身が先行しないように注意が必要です。


 ② 股関節の動きを促通

  離床が進んだら次に生活上での股関節の動き方を説明する必要があります。

  hip - spine syndrome等とも関連してきますが、

  椎間関節で動きが出ているのか、股関節で動きが出ているのか、この違いを評価します。

脊椎圧迫骨折 理学療法 股関節の動き


  プロって本当にすごいですね!

  私もフットサルやゴルフをするのですが、

  これだけの 『股関節内転』 や 『股関節内転+内旋』 は とても出ません。

  年に1、2回のゴルフに行った次の日は腰が痛いです・・・とほほ・・・

  

脊椎圧迫骨折 理学療法 股関節の動き 屈伸

脊椎圧迫骨折 理学療法 股関節の動き 横移動

脊椎圧迫骨折 理学療法 股関節の動き 捻じり



  違いが分かりますでしょうか?

  ポイントは 「股関節で曲げる!」 「股関節で側方へ」 「股関節を先行させて外旋しておく」 です!

  (最後の写真は少し分かりにくいですが、膝の向きを見てみて下さい。)

  そのためにも、体幹が両足で形成される支持基底面上に位置することが重要です。

 
 ③ 洗体・洗髪動作での注意点

  体幹ギプス固定除去後、入浴時はコルセットを外した状態で洗体・洗髪を行うと思います。

  1)座高の高い シャワーチェア等を用いて低い洗面イスを使わない!

  2)手桶は持たず、基本的にシャワーを使用する。

  3)シャワーは固定しているところに体を近づけるのではなく、

   必ず手に持って自分に近づける ( 常に体幹は伸展位に保ち前屈しない )。

  4)足先を洗うときには屈まず、股関節屈曲+外旋させて反対の足の上に乗せて行う。

    あるいは柄つきブラシを用いて行う。



長文になってしまいましたが、脊椎圧迫骨折に対する基本動作指導を書きました。

また違った方法等あれば教えて下さい!

脊椎圧迫骨折の骨折部位はかなり動く! それに対して体幹ギプス固定?コルセット?

前回は脊椎圧迫骨折の疼痛について書きました。

その中で、Intravertebral vacuum cleft の紹介をしました。

Intravertebral vacuum cleftはX-P上で撮像される現象ですが、

『 臥位での撮影ではvacuum像が撮像されるが、立位では撮像されない! 』

つまり、『 重力の影響や運動により骨折部は容易に動く 』 ということが考えられます。

(ぜひ、脊椎圧迫骨折に対する理学療法 疼痛の評価が命 の項目を読んでください )


本日は、

 濱田修 「骨粗鬆症性椎体骨折の診断と治療」 北整・外傷研誌 27,94-98,2011

を紹介したいと思います。


〇 脊椎圧迫骨折部の動きについて

脊椎圧迫骨折 理学療法 3態撮影
脊椎圧迫骨折 理学療法 3態撮影でのX-P像

  椎体内の異常可動性をとらえる目的で、三態撮影を行った結果が上図の通り。

  これを見て本当にびっくりしたのを覚えています。

  皆さんは骨折したことがありますか?

  私は左橈骨遠位端骨折と左第3、4中足骨骨折をしたことがあるので骨折の痛みはよく分かります。

  ほんまにちょっと触っただけでも激痛が走ります!

  こんだけ動いたらそりゃ痛いですよね。

  明日から骨折直後の患者さんに基本動作を指導する際は、痛みを分かちあってあげて下さいね。


〇 骨粗鬆症性椎体骨折の自然経過

 それでは受傷直後はこれぐらい動くんだということが分かりましたが、

 経過が進むにつれてどうなるのでしょうか?

 論文内では、腰椎バンド固定のみで活動制限を行わなかった群が紹介されています。

 腰椎バンド(マックスベルト)ってみなさんご存知ですか?

 こんなやつです。ちょっと腹圧が上がるかもしれませんがほとんど固定力はありません。

 (腰痛症をお持ちの方には上手に使えばいいと思いますよ!)
 

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 なので、

  「骨粗鬆症性脊椎圧迫骨折を起こして何も制限しない場合の自然経過」

 と捉えてらっしゃいます。

 結果は以下の通り。

脊椎圧迫骨折 理学療法 腰椎バンド固定 3態撮影 角度

 入院直後の損傷椎体には仰臥位と座位で平均12.3度の動きあり。

 3か月の時点で減少したものの平均9.7度、また相対的に圧潰が進んでいることが分かる。

 1年経っても 14例中10例で平均9.7度の椎体可動性が残存していた。

 つまり、

 「 骨粗鬆症性椎体骨折の自然経過では、受傷後1年経っても骨癒合しない症例が多い 」

 とのことである。


〇 骨粗鬆症性椎体骨折に対して体幹ギプス固定を行った場合の経過

 
胸腰椎移行部椎体骨折 46例に対して 体幹ギプス固定を8週間したとのこと。

 体幹ギプスは仰臥位で固定し、積極的矯正は行わなかった。

 体幹ギプス除去後は硬性コルセットにて8週間固定。

脊椎圧迫骨折 理学療法 体幹ギプス固定 3態撮影 角度

 
 椎体の動きが明らかに減少しているのがよく分かりますね。

 マックスベルトと体幹ギプスの固定力の違い・・・イメージ通りですね。

 これらを見て皆さんはどちらの固定を選択したいですか?


〇 硬性コルセットも強固な印象がありますが?

 体幹ギプス固定と同じくらい固定力があるのではないかと思うのが硬性コルセット。

 しかし、濱田の論文やその中で引用されている論文でも、

 「 胸腰椎移行部の椎体骨折に対する硬性装具の固定効果は十分でない 」 と述べている。

 その理由として、椎体圧潰の進行や偽関節、神経障害の発生頻度を上げている。

 
脊椎圧迫骨折 理学療法 体幹ギプスと硬性コルセットの比較

 確かにこれを見ると硬性コルセットでは不十分な印象があります。

 これを見て皆さんはどちらの固定を選択しますか?



本日は、1つの論文を取り上げて

『 骨粗鬆症性脊椎圧迫骨折後の椎体は重力の影響や運動により容易に動く 』

ことをイメージしていきました。

ただし、あくまでも私がこの論文を読んだ感想ですので、

ご自身の目で原著論文を確認していただき、

ぜひ批判的吟味を加えて皆様の知識の足しのきっかけになることを願っています。

ありがとうございました。

脊椎圧迫骨折に対する理学療法 疼痛の評価が命

前々回は、『 脊椎圧迫骨折に対する理学療法のポイントは脊柱起立筋 である 』 と書きました。

その理由は分かって頂けましたでしょうか?

重要なポイントですので、ぜひ覚えていてください! ⇒ 「脊椎圧迫骨折に対する理学療法④」

そして前回は 『 固定方法の多様性 と それに伴う治療方法の 曖昧さ 』 について書きました。

⇒ 「脊椎圧迫骨折に対する固定方法 体幹ギプス?コルセット?

医師によって治療方法が異なる・・・理学療法士はどうすればいいのか?

本日は、固定方法が異なっても共通して言えること 『 疼痛 』 に着目した話をしたいと思います。


〇 脊椎圧迫骨折における疼痛

 
脊椎圧迫骨折の患者さんはどうやって皆さんのところに訪れますか?

 大概は、玄関で尻餅をついて・・・しばらく我慢してたんやけど…朝起きたら動けなくなって・・・

 とか、

 何にもしてないんやけど腰が痛くなって・・・とうとうトイレから立てなくなったから救急車呼んだ・・・

 とかじゃないでしょうか。

 疼痛を考える上で、また脊椎圧迫骨折の理学療法をしていく上で、

 『 疼痛が出現した契機 』 つまり 『 明確な受傷機転があるのかないのか 』

 は必ず把握しておくべき情報だと思います。

 自然骨折を起こした患者は過負荷になりやすい点に注意が必要です。

 ただし、攻めあぐねて過剰な廃用症候群を作ってしまうリスクも高いです。

 攻めすぎず、引き過ぎず、適切を選択する!

 『 受傷機転が明確でない患者さんの理学療法は1段高い配慮と経験が必要 』 です。


 疼痛の機転を確認したら、次は最重要ポイント 『 疼痛の程度 』 です。

 疼痛の評価は非常に難しいですが、その程度を把握することは非常に重要です。

 そのため、『 鎮痛剤の使用による脊椎圧迫骨折の疼痛のマスキング(隠してしまうこと) 』 

 非常に配慮が必要です。

 鎮痛剤を使用しての積極的活動は支離滅裂です! そんなの理学療法ではありません!!

 
それでは疼痛の評価がなぜ重要かを3つの論文から述べたいと思います。


〇 脊椎圧迫骨折と破裂骨折の疼痛変化 (出典:関節外科 23,345-349,2004)

 対象 : 163 例(男 21 例,女 142 例)。 平均  80.1 ± 5.9 歳。

 治療 : 全例体幹ギプス固定。 入院は原則 2~4 週。

 方法 : VASチャートを用いて ベッドから起き上がる時の疼痛の程度 を問い記入した。
 

疼痛の変化
疼痛の継時的変化


 結果 : ① 脊椎の 圧迫骨折 と 破裂骨折 では 異なる経過を示し、
         
         体幹ギプス固定をしても疼痛があまり軽減しない場合は 破裂骨折 を疑う。

       ② VAS値が 8以上 の場合は 安静臥床 を進め、 ADLに介助を要する。

       ③ VAS値が 2以上 7以下 の場合は移動が可能である。

       ④ VAS値が 2以下 となったら退院可能で 硬性コルセットに変更しても良い。


 【ブログ筆者私見】

  この論文結果から、

  「 疼痛の程度を評価することで ADL あるいは 固定方法の移行時期を決定しやすい! 」

  臨床家からすると、ついつい主観的になりがちな介入を客観的にできる有意義な情報だと思います。

  特に Face scale ともリンクさせてあるので、

  痛いのに痛くないと言ったり、過剰な痛みを訴える人 等にも対応できると思います。

  少なくとも 『 疼痛の程度 』 を評価することが重要である と認識を持っていただき、

  日々 患者さんの 疼痛の程度 を VAS scale で評価することをしてみて下さい。

  ただし 硬性コルセットの移行期に関しては先生によって考え方が異なると思います。

  当院では、硬性コルセットも一時期していたのですが、

  着用期間が短いこと、軟性コルセットに移行することからコストパフォーマンスを考慮し、

  仮骨が十分できる 6-12週体幹ギプス固定を行い その後軟性コルセットに移行しています。


〇 注意が必要な疼痛 「なかなか引かない痛み」 「途中から出てきた痛み」

 Intravertebral vacuum cleft
 というのを聞いたことがありますか?

 Intravertebral : 脊柱内の  vacuum : 真空  cleft : 割れ目・裂け目

 医学的には、X-P上確認できる現象で、「椎体内壊死病変」 と表記します。

 その言葉通り、骨折後にうまく治癒が進まず壊死しまった状態です。

 

Intravertebral vacuum cleft

                                     (Eur spine J 20,1341-1348,2011)

 特徴としては、

  ・ 骨梁が消失し正常骨梁との境界が明確になっている。

  ・ 明らかな不安定性を生じている場合には特に 「 偽関節 」 と呼ぶ。

  ・ 液体・ガス・壊死物質により充填されている。

  ・ 『 不安定性により体動時の慢性的な強い痛みを訴えることが多い! 』

 つまり、『 なかなか引かない痛み 』 は Intravertebral vacuum cleft を疑ってみることです!

 じゃあどうするのか?


〇 癒合不全例について (出典:日本腰痛会誌 8,166-172,2002)

 症例 : 体幹ギプス固定を3週間実施し、硬性コルセットに変更した。

       経過良好と思われたが再び腰痛増強した!

       初診後4カ月のX-Pにて、 Intravertebral vacuum cleft を呈した。

 経過 : 患者が脊柱後弯を矯正するために行っていた

       『 腰を伸ばす運動 』 と 『 仰臥位で寝ること 』 を中止させた。

      腰痛消失し、初診から1年後のX-Pでは第1腰椎の癒合不全は治癒した。

癒合不全例(一部改編)

 注意する点として、

 『 臥位での撮影ではvacuum像が撮像されるが、立位では撮像されない! 』

 以下のX-P像は同日に撮像されたものですが、立位でvacuum像が消失しているのが分かると思います。

 
脊椎圧迫骨折 理学療法 vacuum像 臥位・立位の違い

 つまり、『 重力の影響や運動により骨折部は容易に動く 』 ということが想像されると思います。


 少し長くなってしまったので、骨折部の動きはまた次回書くことにします。

 正直私はこれを知った時に衝撃を受けました。

 『 脊椎圧迫骨折の骨折部ってこんなに動くんだ!!! 』 と。


 今日は、脊椎圧迫骨折の疼痛について書きました。

 繰り返しになりますが、本日の臨床よりぜひ 『 VASで疼痛の程度を評価 』 してみて下さい。

脊椎圧迫骨折に対する固定方法 体幹ギプス?コルセット?

脊椎圧迫骨折に対する治療方法が確立されていないことは以前の記事にも少し書きました。

⇒ 骨粗鬆症性 脊椎圧迫骨折 に対する 理学療法①

どのように異なるか?

大きな要素として、 「 骨折部の安定を図るための固定方法 」 

整形外科医師の考え方によって全然違います。


・体幹ギプス ・硬性コルセット ・軟性コルセット ・マックスベルト ・固定具を使用しない

大きく分けるとこのような感じでしょうか。


前回記載した middle column損傷を伴い 遅発性神経麻痺 のリスクがある場合は

強固な固定 あるいは 手術 あるいは 絶対安静期間 を設けられると思いますが、

それすら必ずこれっていうのはありません。


また固定具を選択した後、床上安静期間を設けるかどうかも異なってきます。

・・・脊椎圧迫骨折の治療は簡単そうで奥が深いですね。

早く明確なエビデンスに基づく治療方法の選択基準ができたらいいなと思っています。


ただ一つ言えることは、

「興味がないから、体幹ギプス固定がめんどうくさいから、

 マックスベルト付けて少し入院してごろごろ寝といて、少し痛みが引いたら帰ってね。」

という治療だけはやめてほしいなと思います。

(もしかしたらそのような治療方法がその人に合っている場合もあるのかもしれませんが)。

自分が年をとって脊椎圧迫骨折になって痛みを感じながらただ寝るだけ、

寝返りうつたびに疼痛に怯える・・・そんなの絶対嫌です。

「正しい固定法の選択、適切な安静期間、理学療法による基本動作練習とトレーニング」

必ずこれらの適切な選択が必要と思います。


「 椎骨と同じ海綿骨の骨折、 踵骨骨折 なら 

 しっかりと免荷~部分荷重~全荷重と 荷重コントロールして、

 必要に応じてピンニング等で 手術療法 して、

 必要に応じて 下肢装具を用いて 装具療法 して、

 拘縮等作らないよう、また上手に歩行できるよう 理学療法 して、

 としっかり治療プランがあります。

 どうして 同じ海綿骨の骨折である 脊椎圧迫骨折 はしっかり治療プランを立てないのでしょうか? 」


すいません、少し言い過ぎました。

文献検索をしていると、脊椎圧迫骨折を熱心に治療されている先生もたくさんいます。

そういった先生が増えることを願っています。

『 脊椎圧迫骨折も踵骨骨折も 初期に強固な固定が必要 』

私はそう感じています。


〇現在の脊椎圧迫骨折の固定方法選択割合は?

 それでは医師によってどれくらい固定方法が異なるのでしょうか?

 今日は最後に二つの文献を紹介したいと思います。

 ①アンケート調査(地方) (出典:西日本脊椎研究会誌 28,1-5,2002)

  岡山大学の整形外科学教室に所属する医師対象。 回答率は65.7%(332名)。

  約 1/3 が体幹ギプス固定 を選択されている。

固定方法地方アンケート


体幹ギプス固定内訳
非体幹ギプス固定内訳



 ②アンケート調査(全国) (出典:中部整災誌 51,231-232,2008)

  全国調査。 1200施設/3509施設を選択。 回答率39.2%(470施設)。

  約 1/3 が体幹ギプス固定 を選択されている。

固定方法全国アンケート


 全国、地方どちらを見ても体幹ギプス固定を用いるのは約1/3でした。

 私は体幹ギプス固定をする医師、しない医師、両方の理学療法を経験しています。

 また他院の理学療法士からは先生によって全然違うからよく分からんと言う声をよく聞きます。

 何回も書きましたが、現時点でこれっというのはありません。

 しかし多数の患者を見ていて思う私が受けたい治療は、

 ①受傷後早期から体幹ギプスによる強固な外固定

 ②受傷後早期からの離床(寝返り動作や起き上がり動作の指導)

 ③2-3週間はあまり軸圧をかけないトレーニング : 体幹よりも下肢・上肢等

 ④その後は積極的に 体幹 「脊柱起立筋」 のトレーニング

 ⑤X-Pで椎体圧潰進行が進んでないことを確認して軟性コルセット(約固定6週ぐらい)へ移行

 ⑥3か月後に軟性コルセットoffへ

 このような治療を選択したい。

骨粗鬆症性 脊椎圧迫骨折 に対する 理学療法④

高齢者の4大骨折。

「大腿骨頸部骨折」 「上腕骨近位端骨折」 「橈骨遠位端骨折」 「脊椎圧迫骨折」

今日は脊椎圧迫骨折に対する理学療法運動プログラムの提案を。


〇脊椎圧迫骨折に対する理学療法の目的は?

 『 椎体の楔状(けつじょう)変形による脊柱前彎変形の防止 』

 これに尽きると思います。

 楔状・・・少し聞きなれない!?かもしれませんが、くさびがたのことです。

 (くさびとは堅い木材や金属で作られたV字形または三角形の道具)「Wikipediaより」

 くさび

 椎体の前壁が大きく崩れると、脊柱全体は変形した骨を頂点として折れ曲がってしまいます。

 脊柱屈曲変形

 このように変形してしまうと、『逆流性食道炎』 や 『胸郭圧迫による呼吸機能の低下』 を引き起こし、

 生命予後やQOLを著しく低下させてしまいます。

 よって脊椎圧迫骨折に対する理学療法 (整形外科的治療) の目的は、

 『 椎体の楔状変形による脊柱前彎変形の防止 』

 と言えます。


〇脊椎圧迫骨折に対する理学療法のターゲットマッスルは?

 理学療法の治療としてまず対象とすべき筋肉は、 『 脊柱起立筋 』 です!

 意外に忘れがちなポイントです。

 なぜなら脊椎圧迫骨折に対して理学療法をする際に、大抵の患者は痛みの訴えが一番です。

 ( 体幹ギプス固定が適切にされていれば疼痛が問題となることはほとんどありません )

 痛みに応じて理学療法士は患者さんに動いてもらうため、

 寝返りや起き上がり等の基本動作練習や当たり障りのない上下肢の運動を選択してしまいがちです。

 もちろんそれらの治療も大切なのですが、

 しっかりと脊柱起立筋のエクササイズを導入していくことも重要なポイントです。

 
 では、なぜ 『 脊柱起立筋 』 を鍛えるべきなのでしょうか?

 それは、『 骨折した椎体前壁の圧縮応力を減らすため! 』 です。

 どういうことかと言いますと、次の絵を見て頂けると分かると思います。

 ( どこかの文献にあったのですが・・・私は患者さんにも洗濯ばさみを使って説明しています )

洗濯ばさみによる脊柱起立筋の作用イメージ


 赤い矢印が脊柱起立筋の作用となりますが、

 椎間関節を支点に テコの作用 となってますね (国試でよく出ましたねw)。


〇加齢とともに弱化する筋 『 脊柱起立筋 』

加齢と脊柱起立筋
                          (The Bone 20, 489-492, 2006-2007)

 脊柱起立筋は 年齢と比例して弱化していきます。

 抗重力筋が年齢とともに低下していくことは、

 年配者ほど円背の方が多いことを思うと納得できると思います。

 昨今、姿勢の重要性が認識されいろいろな健康器具等も出ていますね。

 

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 若いころから気を使うこと (特に子供の成長) は食事等と同じで非常に重要ですね。

 (これを書きながら思わず背筋を伸ばしてしまいました)


〇脊柱起立筋強化方法

 一般的には、有名なものに Sinakiらの方法 として以下の2種類があります。

脊柱起立筋強化方法
                                       (臨床リハ14,989-995,2005)

 しかしながら円背した高齢者ではうつ伏せになることが難しい場合があります。

 また体幹ギプスを装着している場合もあるので、さらにうつ伏せが難しいかもしれません。

 ( 臨床上、こんな恰好したらここが当たって痛いとよくお叱りを受けます )

 さらに重要なことに 『 臥位では骨折部に重力による適度な圧縮力がかからず不安定 』 な場合があり、

 そのような状態で 『 脊柱起立筋を作用させ骨折部の離開力を働かせる 』 と

 骨折の治癒が遅延する可能性 があります!

 
 このことを記載している論文が理学療法士の中で有名になりました(PTジャーナル賞受賞されています)。

 ↓ ↓ 一読する価値ありです ↓ ↓

 骨粗鬆症性脊椎圧迫骨折に対する運動療法の意義―椎体圧潰変形の抑止効果について


 そこで脊椎圧迫骨折患者でも行いやすい脊柱起立筋のエクササイズとして以下のものがあります。

脊柱起立筋のエクササイズ(座位・立位)
                                      (臨床リハ14,996-1002,2005)

 私も臨床で取り入れているので具体的に方法を記載すると、

 ① 10回 × 3sets  を  3回 / day 行う。

 ② start position は 肩関節90度屈曲位 ⇒ finish position は 肩関節120度屈曲位

 ③ 3秒挙上 ⇒ 2秒制止 ⇒ 3秒かけて戻す。

 ※ 円背の人は肩峰上腕関節への過負荷を避けるため上げ過ぎない。

 ※ カウンターウェイトによる代償を避けるため体幹が伸展しないようにする。

   (矢状面で肩峰と大転子が一直線を保つように)

 
 この方法であれば、高齢者(当院は90歳以上の方も多々)でも問題なく実施できます。


〇ベーラー体操

 本日の最後に、有名なベーラー体操を記載しておきます。

ベーラー体操
                                       (理学療法 18,686-693,2001)

 国試で勉強しましたが、これまで私も具体的な内容は知りませんでした。

 強者(兵)はチャレンジしてみる価値あるのでしょうか!?

 ・・・間違っても高齢者にはしないで下さいね!

 (全種目できる高齢者がいたら教えて下さい!)
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