理学療法士の視点から

脊椎圧迫骨折に関しての知識や運動療法プログラムの提案を行ってきました。

ただ理学療法士は理論や考察するのは大好きですが、

『 明確な効果を提示する 』

ことが少し苦手な職種であると自分自身含め思っています。


具体的に言うと、ちょっと脊椎圧迫骨折から離れますが

膝OAに対する保存的治療の理学療法介入として、

『 患者教育と生活指導 』 『 運動療法 』 『 減量療法 』

がエビデンスレベルが高いとされています。 ⇒ 膝OAのPTガイドライン(外部リンク)

その運動療法の中身を見ていくと、

『筋力増強運動』 『有酸素運動』 『足底挿入板』 『超音波療法』

がエビデンスレベル1とされています。

昔の教科書と何か変わった!?

(足底板が入っていることに少し感動!明らかに効果がありますもんね!!)

しかしながら文面もどことなく弱気な感じ。

まとめにも書いてありますが、ほぼ欧米のデータを引用。

その上、膝OA患者の約9割が保存療法を選択されているにも関わらず、

専門家である理学療法士の介入が十分にできていない現状が伺える。

皆さんの施設は外来で膝OA患者さんを受け入れていますか?

体操パンフレットを渡してQuad exerciseをさせているだけではありませんか?


少し話がそれてしまいましたが、

脊椎圧迫骨折に対する理学療法に関してもインナーマッスルを鍛えよう等、

専門家ぽいところを見せようと努力してはいますが、

効果の是非を聞かれるとデータを提示してはっきり答えられる理学療法士はいるのでしょうか?

私はできません…


そのような現状を把握してPT一人一人がセオリーに興味を持ちつつ、

それを結果に結び付け明確に提示する努力が日々の臨床で必要だと思います。

ぜひ若いPTの力を合わせて理学療法士という職種がよりよくなるよう頑張りましょう!


私の思いばかり書いても全く面白くないので、

最後に脊椎圧迫骨折の保存療法に関する日本のRCT論文を一つ紹介します。

私は体幹ギプス固定が良いと思っている視点で読みますのでどうしてもバイアスがかかります。

皆さんもぜひご自身の目で確かめて下さい。


「骨粗鬆症性椎体骨折に対する保存療法の指針策定」
-多施設共同前向き無作為化比較パイロット試験の結果より-

出典: 日整会誌 (J.Jpn.Orthop.Assoc.)85:934-941,2011

 【対象】
 
  原発性骨粗鬆症患者に生じた外傷性あるいは脆弱性脊椎椎体骨折患者。

  選択基準に当てはまり、除外基準に当てはまらない患者。

 【群分け】

  ①14例 : 3週間のベッド上安静後、半硬性体幹装具を9週。

  ②15例 : 早期に体幹固定+活動を計12週(ギプス4週・半硬性体幹装具4週・既製体幹装具4週)。

  ③14例 : 早期に既製体幹装具を装着しすぐに活動。12週固定。

  ※ 運動器リハビリテーションプログラムは統一されたもの

 【評価項目】

  主要 : 骨癒合の有無 偽関節の有無 椎体変形の進行程度

  副次的 : VASによる経時的疼痛評価 神経症状の有無 SF-36(QOL評価) 骨折前後の介護認定度 DXA(骨塩定量)

 【結果(一部抜粋)】

  ・ 各群間における経時的な骨癒合率、偽関節発生率に有意な差はみられなかった。

  ・ 楔状率は3群において有意な群間差が検出 され、

   ①と②群間に有意な差が、①と③群間でも有意ではないものの差がある傾向にあった。

  ・ VAS、介護認定度、DXAにおいては3群間に有意な差を認めなかった。

  ・ SF-36のSocial Functionにおいて①と②群間の間に有意差がみられた が、

   その他のサブスケールについては有意差はみられなかった。



【以下は私見】

こういう論文を読むとまず症例を集める大変さを痛感します。

このように形にされた努力は並大抵のことではないと思い感動を覚えます。


結果については、骨癒合率や偽関節発生率に有意な差がみられなかったことが意外でした。

私の印象としては③群がかなり危険かと思っていましたので。

ただ症例数が少ないので今後大規模比較が成されると変わってくるかもしれませんね。


楔状率に関してはやはりしっかり固定するべきなのかなと思いました。

ただSF-36の結果と疼痛の程度(絶対差が出ると思ってたのですが・・・)を見ると

 ⇒ SF-36についてはこちらをご参照下さい(外部リンク)

解釈によっては

過剰な固定は除痛効果が乏しいのにQOLを著しく下げる

という結果になってしまいます。


明確な効果を提示することが苦手なPTの戯言ですが、

『 体幹ギプス固定は間違いなく除痛効果に優れ、早期離床を推進し椎体の楔状化を防ぐ 』

という視点で理学療法介入を行い、

『 強固な固定はADL制限やQOL低下を引き起こしやすい 』

というデメリットを把握し、

PTとしてこれらを防ぎながらよりより脊椎圧迫骨折の理学療法が提供できるよう、邁進していきたい!


☆ 読んで頂きありがとうございました!

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