前回は脊椎圧迫骨折の疼痛について書きました。

その中で、Intravertebral vacuum cleft の紹介をしました。

Intravertebral vacuum cleftはX-P上で撮像される現象ですが、

『 臥位での撮影ではvacuum像が撮像されるが、立位では撮像されない! 』

つまり、『 重力の影響や運動により骨折部は容易に動く 』 ということが考えられます。

(ぜひ、脊椎圧迫骨折に対する理学療法 疼痛の評価が命 の項目を読んでください )


本日は、

 濱田修 「骨粗鬆症性椎体骨折の診断と治療」 北整・外傷研誌 27,94-98,2011

を紹介したいと思います。


〇 脊椎圧迫骨折部の動きについて

脊椎圧迫骨折 理学療法 3態撮影
脊椎圧迫骨折 理学療法 3態撮影でのX-P像

  椎体内の異常可動性をとらえる目的で、三態撮影を行った結果が上図の通り。

  これを見て本当にびっくりしたのを覚えています。

  皆さんは骨折したことがありますか?

  私は左橈骨遠位端骨折と左第3、4中足骨骨折をしたことがあるので骨折の痛みはよく分かります。

  ほんまにちょっと触っただけでも激痛が走ります!

  こんだけ動いたらそりゃ痛いですよね。

  明日から骨折直後の患者さんに基本動作を指導する際は、痛みを分かちあってあげて下さいね。


〇 骨粗鬆症性椎体骨折の自然経過

 それでは受傷直後はこれぐらい動くんだということが分かりましたが、

 経過が進むにつれてどうなるのでしょうか?

 論文内では、腰椎バンド固定のみで活動制限を行わなかった群が紹介されています。

 腰椎バンド(マックスベルト)ってみなさんご存知ですか?

 こんなやつです。ちょっと腹圧が上がるかもしれませんがほとんど固定力はありません。

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 なので、

  「骨粗鬆症性脊椎圧迫骨折を起こして何も制限しない場合の自然経過」

 と捉えてらっしゃいます。

 結果は以下の通り。

脊椎圧迫骨折 理学療法 腰椎バンド固定 3態撮影 角度

 入院直後の損傷椎体には仰臥位と座位で平均12.3度の動きあり。

 3か月の時点で減少したものの平均9.7度、また相対的に圧潰が進んでいることが分かる。

 1年経っても 14例中10例で平均9.7度の椎体可動性が残存していた。

 つまり、

 「 骨粗鬆症性椎体骨折の自然経過では、受傷後1年経っても骨癒合しない症例が多い 」

 とのことである。


〇 骨粗鬆症性椎体骨折に対して体幹ギプス固定を行った場合の経過

 
胸腰椎移行部椎体骨折 46例に対して 体幹ギプス固定を8週間したとのこと。

 体幹ギプスは仰臥位で固定し、積極的矯正は行わなかった。

 体幹ギプス除去後は硬性コルセットにて8週間固定。

脊椎圧迫骨折 理学療法 体幹ギプス固定 3態撮影 角度

 
 椎体の動きが明らかに減少しているのがよく分かりますね。

 マックスベルトと体幹ギプスの固定力の違い・・・イメージ通りですね。

 これらを見て皆さんはどちらの固定を選択したいですか?


〇 硬性コルセットも強固な印象がありますが?

 体幹ギプス固定と同じくらい固定力があるのではないかと思うのが硬性コルセット。

 しかし、濱田の論文やその中で引用されている論文でも、

 「 胸腰椎移行部の椎体骨折に対する硬性装具の固定効果は十分でない 」 と述べている。

 その理由として、椎体圧潰の進行や偽関節、神経障害の発生頻度を上げている。

 
脊椎圧迫骨折 理学療法 体幹ギプスと硬性コルセットの比較

 確かにこれを見ると硬性コルセットでは不十分な印象があります。

 これを見て皆さんはどちらの固定を選択しますか?



本日は、1つの論文を取り上げて

『 骨粗鬆症性脊椎圧迫骨折後の椎体は重力の影響や運動により容易に動く 』

ことをイメージしていきました。

ただし、あくまでも私がこの論文を読んだ感想ですので、

ご自身の目で原著論文を確認していただき、

ぜひ批判的吟味を加えて皆様の知識の足しのきっかけになることを願っています。

ありがとうございました。


☆ 読んで頂きありがとうございました!

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