「大腿骨頸部骨折」 「上腕骨近位端骨折」 「橈骨遠位端骨折」 「脊椎圧迫骨折」
前回に引き続き「脊椎圧迫骨折」の続きを。
前回は (脊椎圧迫)骨折は骨粗鬆症の合併症であると書きました。
(もちろん転落による外傷の場合もあります)
本日は脊椎圧迫骨折の内容について。
〇脊椎圧迫骨折 (vertebral compression fracture)
まずは脊椎圧迫骨折のイメージを持つために以下の動画をご覧ください。
どういった外力が働いてどこの部分が骨折するかイメージが沸いたでしょうか?
〇脊椎圧迫骨折の特徴
骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2011年版の疫学を見ると、
①近年の山村住民の10 年間の追跡調査から椎体骨折の10 年間の累積発生率は、
60 歳代 男性で5.1%,女性で14%
70 歳代 男性で10.8%,女性で22.2%
②広島でのコホート研究の参加者2,356 例を4 年間追跡し、
椎体骨折の発生率を推計した報告では、
発生率は女性で高く、 加齢とともに著明な上昇を示す
とのことである。
骨折部位に関してが重要で、
脊椎圧迫骨折多発部位は 「 胸腰椎移行部 」 です。
(臨床リハ 14,989-995,2005)
胸腰椎移行部とは、大概の資料では第11、12胸椎および第1、2腰椎を指します。
その特徴は、
① 第2-10胸椎までは肋骨胸郭のため可動性が少ない
⇒ 動かない分、折れにくい
② 腰椎は前彎を有し、可動性に富む。
⇒ よく動く分、負担がかかりやすい
③ 腰椎は胸椎と比べて椎体が大きい
ということで動かない強固な部分を支えるよく動く部分「胸腰椎移行部」は
よく負担がかかります。
(腰椎椎間板ヘルニアの好発部位はL4/5,L5/S、L3/4と
前彎が強く剪断ストレスが加わる部分で脊椎圧迫骨折とは異なります。)
〇脊椎圧迫骨折の種類
①圧迫骨折 : 屈曲外力による前方支柱の損傷。脊髄損傷はあまり起こらない。
②破裂骨折(Burst fracture) :
垂直圧力による損傷。
脊髄損傷を起こすこともある。椎体の後方要素まで損傷していることが多い。
③脱臼骨折(Facet dislocation) :
伸展力、屈曲力、回旋力などが複合して発生。
不安定型骨折となり、脊髄損傷は必溌する。
〇Three Columun Theory (Denis,1983)
脊椎を3つのパートに分けます。
① Anterior column : 前縦靭帯と椎体および線維輪の前方1/2
② middle column : 椎体および線維輪の後方1/2 と後縦靭帯
③ Posterior column : 椎弓根より後方の骨性要素と棘間・棘上・関節包靭帯,黄色靭帯
そして分けた部分のどこが折れているかによって特徴があります。
・One column損傷は安定、three column損傷は最も不安定である。
・middle column損傷は神経症状や不安定性と密接な関係がある。
〇脊椎圧迫骨折に対する体幹ギプス固定法
文献には様々な整復法が紹介されています(見た目恐ろしい)。
ベーラーの方法 (理学療法 18,686-693,2001)
Davisの方法 (理学療法 18,686-693,2001)
背臥位反張位整復法 (千葉医学 63,273-281,1987)
一方、私の師事している先生は以下の方法で固定しています。
① 前方に高台を設置し、つかまり立ちの姿勢
⇒ 意外に高齢者でも立っていられます。
たまに失神する方がいますが...
② なるべく胸を張って可能な範囲での矯正
⇒ 若い人の場合は腹臥位で矯正する場合もあり
③ 2、3人がかりで素早くバトンパスのようにして巻く
⇒ 熟練した看護師さんが巻いています
体幹ギプス固定は巻くのに時間がかかったりということで、
整形外科医師から敬遠されがちですが、
熟練した看護師さんを育てることで
医師の力が最小限で治療の一つとして選択できます。
私は体幹ギプス固定が最良と思っているので、
もっと脊椎圧迫骨折や体幹ギプス固定に整形外科医師が
興味を持ってくれればなあと思います。
☆ 読んで頂きありがとうございました!
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